耳鳴り
「君たち 女の子 僕たち男の子
ヘイヘイヘイ(ヘイヘイヘイ)
ヘイヘイヘイ(へいへいへい)
おいで遊ぼう
僕らの世界へ 走っていこう」
(男の子女の子/郷ひろみ・作詞筒美京平)
ミニアルバム「chatmonchy has come 」で、衝撃的なデビューを果たし、1stシングル「恋の煙
」で、その破格の才能を知らしめ、2ndシングル「恋愛スピリッツ
」で、その規格外の才能の底知れなさを確認させてくれた、個人的にも今年、イチオシの徳島発のガールズ3ピースバンド、チャットモンチー。
彼女たちの、デビューアルバム「耳鳴り 」をエンドレスリピートで聞いていると、不思議と冒頭に記した、郷ひろみの「男の子女の子」(今、改めて読み直すと筒美京平って本当に天才だと感じる歌のひとつだったりします。)を口ずさんでしまっていた。
私にとっては、それぐらい強烈に、このアルバム「耳鳴り 」は、
私が、「男」で、彼女たちが「女のこ」
だということを突き付けられる作品でした。
「広がるのは ただ切れ間ない青のコラージュ
少年は バスケットボール枕にして 空に浮かぶ明日をみてる」
(ウィークエンドのまぼろし/作詞・高橋久美子)
変則的なドラムのリズムで始まるのに、不思議とポップな印象を与えてくれる3曲目に収録されている「ウィークエンドのまぼろし」。
ドラムの高橋久美子が作詞を担当しているこの曲では、まさに「青春の1ページ」といった爽やかな情景描写から始まっているのに、
「ねぇ、いつまでも空はこんなに青いのかな?
ねぇ、いつまでも風はこんなに透明なのかな?
ねぇ、いつまでも春の次は夏なのかな?
最悪の日曜日」
(ウィークエンドのまぼろし/作詞・高橋久美子)
と、巡るめく美しい季節を唄いながら、最後のフレーズで「最悪の日曜日」とばっさりと切り捨ててしまっています。
この感覚、「思春期の女のこ」なら考えていそうなことだってことは、「理解」はできるのだが、決して男性である自分には、生まれてこない感情で、正直、歌詞カードを見る前に初めて「最悪の日曜日」のフレーズを聴いた時には相当ビックリしてしまいました。
それにしても、デビューミニアルバム「chatmonchy has come 」のリード曲でもあり、この「耳鳴り
」にも、ALBUMバージョンでも収録されている「ハナノユメ」でも、感じたのだが、高橋久美子の書く詩には、どれも女性特有の「狂気じみた何か」を感じさせてくれて、ちょっと怖いのだが、そこがまた面白い。
「ハチノ巣みたいだ 東京
働きバチの行列だ
私はまだやわらかな幼虫
甘い甘い夢をみてる」
(東京ハチミツオーケストラ/作詞・福岡晃子)
そして、このアルバムの冒頭を飾る、徳島出身の彼女たちの「上京ソング」とも呼べるであろう「東京ハチミツオーケストラ」。
1stシングル「恋の煙」のなかでも、
「当たりくじだけのくじ引きがしたい」
と、いうようなセンス溢れる言葉選びのセンスを見せ付けた、ベースの福岡晃子が作詞するこの曲。
上京してきた、彼女が感じた、まだ見慣れていない風景である東京の様子を「ハチの巣」に見立て、メジャーデビューが決定し、とんとん拍子で上京までこぎつけたであろう彼女たちが
「私はまだやわらかな幼虫
甘い甘い夢をみてる」
と、唄いながらも
「そんなに甘くはないよって
早く 誰か教えてよ」
と、明るい未来に希望だけを抱いているわけではいないことを「歌詞」の中にきっちりと織り交ぜているところに、なんだかとても「女性」っぽさを感じてしまいました。
「あの人がそばにいない
あなたのそばに今いない
だからあなたは私を手放せない」
(恋愛スピリッツ/作詞・橋本絵莉子)
そして、2ndシングル「恋愛スピリッツ」でも、そのストレートな表現とシンプルな言葉で心に突き刺さる歌を見せてくれた、ボーカル、ギター、そして、全ての楽曲の作曲を担当する橋本絵莉子の紡ぐ歌詞には、
「どなる、でんわ、どしゃぶり」
と、言った本当に思い浮かんだ言葉を並べただけ(なのに、情景が色々と想像できてしまうからスゴイ)のタイトルをつけた、恋人の最後の別れの電話を唄った5曲目に代表されるような具体的な情景を描いているのに、少ない言葉数で、極めてシンプルな表現をしているせいで、まるで、「女のこ」の心の中を覗き見したような錯覚に陥ってしまうぐらいに生々しい印象をもってしまうほど。
と、こうやって、3人の紡ぐ歌詞に「女のこ」を感じた場所をそれぞれ書き出してみて、改めて感じるのは、チャットモンチーの3人ともが個性的な味を持った歌詞を書いているなぁ~ということ。
全ての楽曲の作曲をしている、橋本絵莉子というどでかい才能に触発されて開花したのか、それとも、似たもの同士が自然と集まるように終結したのか、なんにしても音楽の神様の存在を信じたくなるような奇跡的なバンドだと思う。
このアルバムでは、そういった3人の個性が、これまでシングルやミニアルバムよりもずっとわかりやすく感じることができるので、そういった楽しみかたも面白いですよ。
また、元スーパーカーのいしわたり淳治をサウンドプロデュースに迎えた、その音も、予想以上にポップで聴きやすいのだが、いざ、口ずさんでみようとすると、変則的なリズムに気づかされたりして、一筋縄ではいかない感じで楽しめます♪
もともと、ライブが評判になって、口コミでそのウワワが広がってきたチャットモンチー。
私の周りでも、すでにライブでチャットモンチーを聴いた人がちらほらいるんだけれども、「CDよりスゴイ!」とかなりの好評価です。(朴訥なMCも、好評。)
まだ、彼女たちの曲を聴いたことがないというあなた!
本当にもったいないと思うんで、是非ぜひ、このアルバムを聴いてみてほしいです。
心から。。
(2006年7月28日:文責:cinemanabu)